見えざる水 ~バーチャルウォーター~
今回は食べ物を通して水について考えて見ましょう。
「水と安全はただ」あるいは、「水の豊富な国」といわれる日本は、実は水の大量輸入国です。といっても、ボトル入りのミネラルウォーターではありません。 私たちの国は、目に見えない形で世界の貴重な水資源に頼っているのです。今回は食べ物を通して水について考えて見ましょう。
食料自給率40%
日本の食糧自給率は他の先進国と比べても低く、カロリーベースで40%しかありません。つまり60%の食糧を輸入に頼っています。野菜や小麦、果物、食肉あるいは家畜を飼育するための穀物の生産には、水が欠かせません。 日常的に意識することはありませんが、食糧の輸入という形で世界から膨大な量 の水を輸入しているのです。
このような目に見えない水のことを仮想水(バーチャルウォーター)または、間接水と呼びます。東京大学生産技術研究所の沖大幹助教授等のグループが試算した結果によると、日本の仮想水総輸入量は640億トンとされています。その量は世界一です。数字が大きすぎてわかりにくいので、具体的な作物で見てみましょう。
1kgを生産するのに必要な水の量は、米(精白米)で3.6トン、小麦は2トン、牛肉では20トンにもなります。この数字をファーストフードに当てはめると、牛丼一杯(並)には 2トン、ハンバーガー(1個)には1トンの仮想水が使われていることになるのです。
世界の食糧生産地では
日本の食糧最大輸入国アメリカ。仮想水全体の約6割をこの国から輸入しています。
「世界のパン籠」といわれてきた中西部は有数の穀倉地帯ですが、降水量はとても少なく、農産物の生産は地下水を使わざるをえません。この地域にはロッキー山脈の雪解け水を蓄えて形成された世界最大級の地下水脈があります。しかし、何千年もかけて蓄えられたこの貴重な地下水が減少しつつあり、水位が下がった井戸、涸れた井戸が出始めています。日本はアジアなど他の国々にも食糧生産を依存していますが、これらの国々も決して水資源に余裕があるわけではありません。とりわけ、工業化の遅れた国では、外貨獲得のために、豊富とはいえない水資源のもとで生産された農産物を輸出しなければならない事情があるのです。そのため、現に不衛生な水で暮らしている人々が多数います。・・・・
飽食ニッポン
国土の問題もありますから、日本が仮想水の輸入を大幅に減らすことは容易では ありません。しかし、日本人は世界から食材をかき集め、おいしいものをお腹いっぱい に食べ、そして食べきれないものを大量に廃棄しています。農林水産省が発表した 2004年度食品ロス統計によると、家庭の食べ残しと廃棄は4.2%、外食の食べ残し は3.3%でした。世界中で飢えに苦しみ、衛生的な飲み水にも困る人が大勢いる中で このような食生活は続けていいことではありません。世界の貴重な水を少しでも 奪わない為に、1人ひとりが食べ物を大切にすることを心がけたいものですね。